組み合わせは無限大! キューブを重ねて建てる家
歴史的な石畳の街並みの中に突如現れたおしゃれなコンテナハウス。「LOGEMENTS PRÉFABRIQUÉS ALGECO」という名のこの建物、実はALGECO(アルゲコ)というフランスのコンテナ会社が住宅用のモジュールハウスとして提案したものだった。
おもちゃのレゴを組み立てるように、自由に間取りを組み合わせられたら……。アルゲコは、そんな悩みにモジュールハウスという考え方を提示した。一般的に、モジュールというと、「規格化されている」「交換可能である」といった意味で使われるが、アルゲコのモジュールハウスもまた、生活に合わせて自由に入れ替え、組み合わせることができる新しい住宅の形を提案している。
この建物の外観をよく見てみると、同じ大きさの正立方体が7つ組み合わさって出来ていることがわかる。このひとつひとつがモジュールだ。アルゲコは、「生活単位=モジュール」と考え、寝る、食べる、遊ぶ、くつろぐ、といった家の中での生活の単位をモジュールとして組み合わせるというアイデアを取り入れたのだった。
そうすることで、居住者は必要なモジュール同士を組み合わせ、自分に合った家を作ることができる。くつろぐなら、ソファやリビングテーブルを配置したモジュールを、遊ぶなら中身は空っぽにして外側をパネルで覆う、といった具合に、住む人が必要なモジュールを自由に組み合わせることで、いくつもの組み合わせが誕生する。つまり、住む人の数だけ、自由に組み合わせが可能というわけだ。
生活スタイルが変化したり、一緒に住む家族の数が変わったり、長い間一つの家で暮らしていく上で、生活スタイルが変わるのは良くあることだが、このモジュールハウスは大規模なリフォームをするのではなく、モジュールの組み合わせを変えたり、入れ替えをしたりすることで、長く暮らすことができるエコロジーハウスでもあるのだ。
ところで、なぜこんな歴史的な街並みにこんな現代的な建物が?と違和感を持つ人も少なくないだろう。
このモジュールハウスが建てられたのは、フランスの郊外にある、サン・ドニという街。かつて、サン・ドニは工業都市で、大気汚染や公害に悩まされ続けていたが、このモジュールハウスが建てられる前の年の2004年に「持続可能な開発賞」を受賞し、その雰囲気を大きく変えた。その後は建築家の手によって、現代的な街並みへと変化を遂げ、街一帯で再開発が進んでいったのだ。
サン・ドニの街では、フランス国内でも有名な大規模な市場が開かれる。市場が開かれる施設では、太陽光発電や溜めた雨水を濾過して再利用するシステムが採用されているという。そんな、サスティナブルな街だからこそ、このモジュールハウスが建てられたのかもしれない。